ハリウッド映画を愛した映画少年が描くリアルな世界 『きらわないでよ』の加藤大志監督

2020/11/04

今回『あしたのSHOW』でご紹介しました『きらわないでよ』
ハンディキャップを背負いながらも好きなことに没頭する男子中学生と周りの目を気にして素直に生きれない女子中学生が主人公の物語となっています。
番組収録後に、監督の加藤大志さんにお話をお伺いしました。

・配信はインディーズ作品の出口の1つ
実は加藤監督、収録が始まる前、そして収録中も「緊張する!」と度々おっしゃられていました。そんな監督に収録後、感想をお伺いすると、やはり「緊張した」と一言。
監督自身は、国内外の映画祭などで何度も舞台挨拶の経験があるはずなのですが、やはり収録と舞台挨拶では勝手が違うようです。
「普段は裏方なので、こういう場に立つと役者さんや表に出る人の凄さを改めて感じます。」とおっしゃられていましたが、はたから見ている分には、収録中そこまで緊張されていたとは思えないぐらい落ち着いたご様子でした。

何人か知り合いの方が出演されていたこともあり、以前から「あしたのSHOW」のことはご存知だった加藤監督に、ネット配信番組についてどう思うか尋ねてみました。
「インディーズ映画は日の目をみる機会が少ないため、出口が1つでも増えるのならいいのかな。」とのこと。
実際に日の目をみることができない良質なインディーズ作品があることを痛感させられるお言葉でした。

そして配信というものに対しても、監督に率直なお気持ちを聞いてみると
「いいも悪いもこういう時代になっちゃったし…(配信が)映画の普及の助けになればいい。」
とおっしゃられたものの、この後に「映画は映画館で見たいなという本音もある」本音もポロリ。
映画製作者として、映画館の大きなスクリーンに自分の作品が映し出された感動は忘れがたいものです。
その瞬間があるからこそ、どんなに辛くても次の作品撮ってしまうと監督も笑っていました。

・映画が特別な存在だった少年時代
21歳の時にENBUゼミナールへの入学したことが、加藤監督の映画製作の転機となります。
しかし、もともと物心ついた時から映画は大好きで、特にハリウッド映画大好きだったそうです。
というのも、監督の少年時代は毎週木曜日から日曜日まで、どこかしらの局で21時からハリウッド映画を中心とした映画番組が放送されていた時代でした。
今の時代と違って気軽に映画館以外に映画を見れるのは、そういったテレビ番組ぐらいしかなく、21時になるのを待ち遠しく思い、そしてワクワクしながら番組のオープニング映像を見ていた経験があるのは、きっと加藤監督だけではないはずです。

また群馬県に住んでいた監督にとって、映画館に行くのも一大イベント!
ご両親に送ってもらって、映画館に通っていたそうです。
加藤監督から映画のお話をお伺いしていると、今より映画が特別な存在だった時代、そして、それはとびっきり贅沢な時代だったことを実感すると同時に、そんな時代を過ごした世代だからこその強い映画愛がヒシヒシと伝わってきました。

・海外で気付いた「日本は映画が撮りにくい」という現実
海外でいろいろな話を聞く中で、加藤監督は「日本は映画が撮りにくい」と感じるようになったそうです。
また、海外と違って日本はあまり映画を「主」にしてない環境だとも話してくださいました。
10年ほど前に監督のお友達が飛び入りで韓国の商店に撮影の協力をお願いしたところ、快く承諾してもらえたのだとか。
撮影にあたり膨大な書類が必要になってくる日本では、なかなか難しい話です。

とはいえども、環境のせいにしちゃいけない。実際にその厳しい環境でいいものを作っている人たちはいると話される監督。
そんな監督に、環境を改善するにはどうすればいいんでしょうとお伺いしてみると
「いい作品取るしかないんですかね。理想論みたいになっちゃいますけど。でも、そんなことを   
 気にせず撮影できるといいな。それが理想。」
と正直に答えてくださいました。

他にも今、通行人の映り込みなどいろいろ気を使わないといけないなどプライバシーやコンプライアンスなどといった問題についても話題になった時に、これから起こりうるかもしれない技術の進化についても監督から面白い話が出ました。
「この状況に応じるために技術が進化して、いろいろ工夫して合成だったりが増えてきたりして、   
 映画の撮影もよくなるんじゃないのかなと思いますけどね。」
監督のおっしゃる通り、これからの技術の進化によって、映画業界の将来もいろいろと変わってくるかもしれません。

・自身の経験を作品のスパイスに
「(映画の)入りはハリウッド映画だけど、撮るものは真逆。」と言う監督。
なぜなんだろうと考えてみた結果、劇中にご自身が体験したこと、本当のリアリティーがないと映画が作りづらく感じてしまうということに気付いたそうです。
番組内で監督がお話された通り、『あしたのSHOW』でご紹介した『きらわないでよ』にも監督のリアルな経験がいくつか組み込まれています。

「だから次作もどこかで自分が体験したことをいれて、面白い作品が取れたらなと思います。」とおっしゃられた後にお話していると「登場人物を不幸にさせたがっちゃうんですよね」とお茶目に話してくださった加藤監督ですが、実は最新作『シャフリヤールの昼と夜』の公開も控えています。

次はどのようなご自身の経験をスパイスにした作品ができるのか、新しい加藤大志ワールドを楽しみにしています。