ドラマと映画に救われて映画業界に。瀬浪歌央監督のこれまでとこれから

2020/11/24

耳の聞こえない少女と健常者の少女の交流を描いた『パンにジャムをぬること』。
京都を舞台に、2人の少女のちょっとした日常を優しく描いた作品です。
今回は『パンにジャムをぬること』を監督された瀬浪歌央さんにお話をお伺いしました。

・観客の感想を直接聞きたい

今回の収録の出演者は、監督はもちろんMCもアシスタントもすべて女性!
スタジオ内は、始終とても華やかな雰囲気でした。

そんな収録の後、監督に感想をお伺いすると、こういった収録は初めての経験で楽しめたそうです。

「こういう形で上映していただけるってめっちゃありがたいなと。やっぱり映画は人に見てもら
 うことが1番だなと思うので、それがこういう形であるって素晴らしいなと。」

と「あしたのSHOW」についてお話ししてくださった監督。
今年の4月に大学を卒業したばかりという監督に、映画のネット配信についてお伺いしてみると「どこにいても作品が観れるというのは、とてもいいことだと思う。」とした上で、今回の作品をオンラインで見る際のおすすめも教えてくださいました。

「今回の作品は音にこだわりを持っているので、オンラインで見る際にはイヤフォンを使って欲しいですね。」

これから『パンにジャムをぬること』をご覧になられる方は、ぜひイヤフォンのご用意をお忘れずに。
もう見たという方も、イヤフォンを付けて見直すことで新しい発見があるかもしれませんよ。

監督自身もオンラインの利便性は実感しているものの、観客みんなで空間を共有できる劇場が、やはりお好きだそうです。
また、作品を見てくださった人の感想を聞くのにも、オンラインだと誰が見てくれたのかがわからず、直接、お話が聞けないのがネックだとおっしゃっていました。
観客からダイレクトに感想が聞けるのは、やはり製作者としては励みになりますし、また上映会などのイベントを行う醍醐味ともいえます。

しかし、すでにお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は「あしたのSHOW」では10月からコメント機能が起動しています。
ですので、作品を見た方の感想をダイレクトに製作者に伝えることができるのです。
監督も、このコメント欄については「すごくありがたい。」とおしゃってくださいました。
ぜひ、皆さんもコメント欄を活用してみてくださいね。
あなたの一言が、次の作品につながるかもしれません。

・ドラマ・映画が楽しみの日々から京都造形芸術大学へ

瀬浪監督が映画の道に入るにあたり大きな影響を与えたのが「テレビドラマ」でした。
中学時代、大のドラマ好きだったという監督。
特に話が何話にも続く連続ドラマには、「まだまだ続きがある」という楽しみと嬉しさがあり、どっぷりハマってしまい、気がつけば見るドラマがないという状態に。
そしてドラマの代わりに手を伸ばしたのが映画だったのです。
すると次は映画に、のめり込む日々が始まります。
中学時代は、映画を3本見ていた日もあったのだとか。

監督にとって「映画を見る時間」は何も考えなくてもいい時間。
そして「明日はこの映画を見るから頑張ろう」と励まされる存在であり、何度も救ってもらったことあったそうです。
そういった経験をしたからこそ、高校で進路を考える際に「そういったものを自分が作れるようになったら、そんな良いことってないな」という思いから、京都造形芸術大学(現在は京都芸術大学)に進学。

大学に入学すると、授業と作品の制作に追われるハードな日々が始まります。
今回、番組で紹介した『パンにジャムをぬること』も、大学の仲間とともに作られた作品です。
ロケ地探しは「実際に街に行ってみて、歩き回るしかない」という信念のもと、担当する部署関係なく、撮影に関わる全ての仲間でロケハンに行って探し回ってロケ地を見つけたそうです。

劇中に登場する和菓子屋さんは、主演のお一人の大塚さんが見つけた清水五条にある「名月堂」さん。
ニッキ餅が有名なお店で、撮影中は大変お世話になったそう。
和菓子屋さんなのに、時々、和菓子じゃないものも振舞ってもらいましたと撮影時やロケハンの話をされる監督はとても楽しそうで、とても充実した日々だったことが伺えました。

監督ご自身も「京都の街並みは絶対に映したい」という思いがあったと同時に、ゼミの企画の条件が「京都を舞台に」だったこともあり、『パンにジャムをぬること』では京都の街並みがとても効果的に映し出されています。
実は街並み以外にも、みたらし団子など京都にまつわるものもいくつか劇中には登場しているので、注目してみてくださいね。

・卒業制作作品が「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」にノミネート
大学の卒業制作作品『雨の方舟』が「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020」の「国内コンペティション長編部門」にノミネートされた瀬浪監督。
現在は、こちらの作品の劇場上映に向けて動き出しているそうです。
すでに新しい作品の構想も2つほど、監督の頭にあるとのことでお話をお伺いしてみたのですが、今までにはない視点で描こうとする構想案はとても興味深く、完成したら間違いなく面白い作品になると感じさせられるほどでした。

今年の春に大学を卒業され、まさにこれから映画界に羽ばたこうとする瀬浪監督に、現状の映画界について率直な意見を聞いてみました。

「若い人の映画離れという言葉を聞くと悲しくなる。同世代も映画を作っているということを知 
 らない人もいると思うので、それだけでも何か、同じ世代の人がこんな風に考えているみたい
 なのを知るということも映画でできると思うので、ちょっとそういう人の頭の中を覗きたいな
 ぐらいな感じで触れていただきたいなと。映画を億劫な時間じゃなくて、楽しんでもらえるよ
 うなものを作っていきたいと思うし、触れてみるみたいなところに繋げられる何かがあればな
 と思います。オンラインはそこに至ってはいいのかなと思います。」

まだ若い監督だからこそ、映画を観ない同世代の若者に訴えられる作品を生み出すことがきっとできるはずだと思います。

次に新作を撮る際にも、きっと今までと同じ仲間で撮ると思うとおっしゃられた瀬浪監督。
今は仲間のみんなで新作の企画を考え中だそうです。
京都造芸発の瀬浪組が日本の映画界を賑やかすのも近いかもしれません。

『雨の方舟』の劇場公開、そして、それに続く新作を楽しみにしています。